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構造物メンテナンス向け解析

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 老朽化する構造物のメンテナンスにおいては構造物の状態を把握するのが第一歩です。鋼道路橋の点検を例として考えてみます。全ての部材にクラックが入っているかどうか正確にチェックするのは容易ではありません。理由として、クラック自体が微小で見つけにくい、また障害物により人が直接目視できないケースもあるなどが挙げられます。見つけにくいクラックは点検装置の改良などによって発見しやすくし、直接目視できないところはドローンを飛ばすことなどが考えられます。しかしながら、正確な点検を行うのが容易でないことに変わりはありません。

 一方で、測定装置を使った構造ヘルスモニタリングも有用な技術として脚光を浴びつつあります。最近では高性能なデバイスが比較的安く手に入るようになってきており、この点はモニタリングを後押ししています。ただ、モニタリングでは竣工当初(損傷前)のデータが必要であったり、または一定期間継続的に計測することが必要になります。なぜなら構造部材の損傷を検出するには一般に損傷前後のデータを比較する必要があるからです。解析においても、このような構造物の損傷把握を目的とした場合には損傷前後のデータが必要になります。

 点検作業の大変さや難しさを鑑みたとき「構造物の点検を行う際にどの部材を重点的に点検すべきか把握できれば効率的ではないか」という考えが浮かびます。例えば、構造部材の一つ一つを別々に損傷したと仮定して橋全体の解析を各々行ったところ全体崩壊の可能性がある場合とそうでない場合があったとします。この場合にはクリティカルな部材から点検をスタートし、また念入りにクラックの有無等を点検していくのが良いでしょう。このような考えは極自然だと思いますが、今のところ実務で盛んに行われるまでには至っておりません(リダンダンシー解析という形でだんだん適用されるようになってきてはいますが)。解析ケース数は多大となることが予想されますが、コンピュータの性能は向上していますし、以前のコラム「量子コンピュータについて」で紹介したように更なる飛躍も期待されます。また、遺伝的アルゴリズム(GA)等を用いた最適化や自動化を図ることによって効率的にクリティカルな部材探索が行えますし、種々の橋梁について解析を行えばデータが蓄積されてノウハウも確立されていくでしょう。

 モニタリングにおいても計測データをもとにした損傷箇所同定などの解析が役に立つ部分もあるでしょう。リダンダンシー解析等の解析技術は構造物点検等のメンテナンスを補完するものとして有用であると考えています。弊社では今回のような話題や以前のコラム「アトラクタ」で紹介したような損傷検出の感度の良い解析技術にも注目しています。

(証)